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石破内閣総理大臣記者会見

2025年6月24日 | 片山 晋一

 本国会の施政方針演説で引用いたしました、「反省すべき点は十分に反省するが、同時に反対党その他の協力を求め、国会がまっすぐに行くように」したい、そのような石橋湛山元総理の言葉を引用いたしましたが、その言葉を胸に、党派を超えた合意形成、真摯な国会審議に、私なりに努めてまいりました。
 その結果として、令和7年度予算は、衆議院では29年ぶり、参議院では初めてとなる国会修正を経て成立をいたしました。政府提出法案は59本中58本、条約は提出をいたしました13本全てが成立をいたしました。
 外交につきましても、大阪・関西万博の機会をいかして、今年に入りましてから40近くの国の首脳の皆様方とお会いをいたしました。そして、アメリカ及びASEAN(東南アジア諸国連合)4か国を訪問をいたしました。
 先般のカナダ・カナナスキスでのG7におきまして、私から、ウクライナ、中東、東アジア、これらの情勢は相互に密接につながっているものであると、したがって、G7が引き続き結束をして国際社会の対応を主導すべきであるということを強調をいたしました。この点については、参加各国から御賛同を頂いたというふうに認識をいたしております。アメリカのトランプ大統領、そして、就任されたばかりですが、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領、そのほかの首脳の皆さん方とも首脳会談を行ったところであります。
 責任与党として、本当に多くの方々のお力を頂き、一定の成果を残せたと、このように考えておるところでございます。改めて、御尽力を頂きました全ての関係者の皆様方に心より御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。

 今国会での議論を踏まえまして、「今日より明日はよくなる」と、そのように実感ができる日本の実現に向けて、現在、名目GDP(国内総生産)は600兆円でございますが、これを2040年に1,000兆円に引き上げる。そして、現在、400万円が平均所得でございますが、これを5割以上増加させることを目指してまいります。

 そのために、3つのアプローチで取り組んでまいります。
 まず、賃上げや物価高対策などの足元の対応を進めることで、「『今日』の悩みを取り除く」ということが第1。次に、アメリカの関税対応、安心・安全の確保、社会保障改革などを通じまして、「『明日』への不安を払拭する」、取り去るということであります。そして、地方創生と投資の促進で、「『希望』ある未来を創る」。御希望される方が安心してお子さんを産み育てられる社会をつくり、出生数が70万人を切った、これは地方創生大臣のときから申し上げていることでございますが、「静かな有事」とも言うべきこの少子化の傾向を、何としても反転させたいと考えております。


 まず、「『今日』の悩みを取り除く」についてでございますが、今年の賃上げは2年連続で5パーセントを上回る増加となりました。33年ぶりの高水準であった昨年を更に上回る見込みでございます。法改正により、約50年ぶりの教職調整額の引上げも実現できました。実質賃金が1パーセント程度上昇し続けていくことが、それが当然となる、そういう社会を実現するために、5年間で60兆円の中小企業・小規模事業者の生産性向上投資の促進などの施策のパッケージを強力に実行いたしてまいります。

 人手不足、あるいは物価高、そういうようなことに直面しておられる医療・介護・保育・福祉、そのような公定価格を引き上げます。
 最低賃金につきましては、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向けて、たゆまぬ努力を継続します。官民で最大限の取組を、5年間、集中的に実施をいたします。予算、税制等の基準値がデフレ期の低い水準のまま長期間据え置かれていないだろうかと、そのようなことに対する総点検、見直しを進めてまいります。

 物価上昇を上回る賃上げを実現するまでの間、その対応として、これまで、低所得の世帯当たり3万円に加えまして、お子さんお一人当たり2万円の給付金、子育て世帯向けに、育休関連給付について手取り10割への拡充、いわゆる「103万円の壁」の引上げによる2万円から4万円の所得税減税などを実施しております。
 しかしながら、いまだに物価上昇を上回る賃上げが実現できておりません。これへの対応をどうしてもしていかねばならないと思っております。したがいまして、赤字国債に頼ることなく、いわゆる「ばらまき」ではない、本当に困っておられる方に重点化をする、新たな給付金を公約に掲げて実現をいたしてまいります。
 特に、物価上昇が著しい食料品の支出に関して、足元の物価上昇の影響を考えて、お子さん一人当たり4万円、低所得者の大人の方にもお一人4万円、それ以外の方々にお一人2万円の給付金といたします。要は、賃金の上昇というものが物価上昇を上回っていないという事実は、謙虚に、真摯に考えていかねばならない、そういうことでございます。
 消費税は、これは何度でも強調いたしますが、医療・年金・介護などの社会保障を支える大切な財源でございます。これは安定財源が必要であります。それなしに減税する、医療・年金・介護の財源である消費税を安定財源なしに減税するというような無責任なことはできません。多くを消費される高所得の方ほどより大きな減税額になります。当然のことでございます。結果として、高所得の方が優遇されることになります。本当にそれでいいのかと。そして、過去の例からも、システム改修などを伴いますために、法改正から実施まで、1年程度の時間を要すると、このように見込んでおります。時間はかかる、高所得の方を優遇することになる、そして何よりも、社会保障の財源を危うくする、その消費税減税は、私には決して適切なものとは思えないのであります。

 子育て世帯への更なる支援として、公明党・日本維新の会との合意に基づき、高校無償化や小学校の給食費無償化などを進めてまいります。
 就職氷河期世代について、生まれた世代で不公平がない、生まれた世代で不公平があるということがあってはなりませんので、そのような不公平がない国を目指して、リ・スキリング、高齢期を見据えた資産形成の支援、これらを強化をいたしてまいります。

 米の価格につきましては、随意契約による50万トンの備蓄米の売渡しを進めてまいります。平均価格が下がり始めるなど、着実に変化は現れております。5キロ3,920円ということになったところであります。
 価格高騰の原因と今般の対応の検証を行い、食料安全保障の観点からも、生産性の向上、付加価値の増大、輸出の拡大を促進するために政策を転換をいたします。消費者の皆様方が安心してお米を買えるようにするとともに、意欲ある生産者の方々が不安なく増産に取り組めるような、そのような米政策を実現をいたします。

 エネルギーの価格上昇に対する対応も重要であります。リッター当たり10円のガソリン価格の定額引下げを行っておるところであります。
 中東情勢の緊迫化により、石油製品価格の急激な上昇が生ずる場合に備えまして、需要の拡大が見込まれます7月から8月にかけて、基金の余剰を活用した予防的な激変緩和措置を、6月26日、この木曜日から開始をいたします。
 ガソリンにつきましては、公共交通機関の少ない地方の負担に配慮をして、現在の定額引下げ措置に加え、小売価格がウクライナ危機前後の水準となっている最近の水準から上昇しないように目指す措置を講じます。
 暫定税率の廃止につきましては、公明党・国民民主党との合意に基づき、社会インフラの整備・維持管理のための安定財源確保などと併せた結論を得ることといたします。安定財源を確保する、これと併せて結論を得るものでございます。
 電気・ガス代につきまして、暑くなる7月から9月にかけて、標準的な御家庭で3,000円程度の負担引下げとなる支援を行います。

 次に、「『明日』への不安を払拭する」ということでございますが、米国の追加関税措置につきましては、「関税よりも投資」と、この方針を踏まえまして、我が国の国益を守りつつ、日米双方にとって利益のある合意が実現できますよう、引き続き、全力を尽くしてまいります。
 全国1,000か所での特別相談窓口で、相談に本当にきめ細かく対応する。中堅・中小企業の皆様方の資金繰り支援を講じるなど、国内産業への支援に万全を期し、必要に応じて、追加の対策もちゅうちょすることなく講じてまいります。

 日本は世界有数の災害大国であります。そうであれば、防災体制は世界一でなくてはなりません。東日本大震災、能登半島地震からの復旧・復興に引き続き取り組むとともに、本国会で法改正を行い、ボランティア団体の皆様方との連携、被災者の方々への福祉サービスの提供、道路・水道などの早期復旧に向けた措置を強化することといたしました。
 避難所の生活環境を改善すると、スフィア基準(人道憲章と人道対応に関する最低基準)という言葉を何度か国会でも使いましたが、トイレカーの数を約4倍にすると、そのように、キッチンカー、あるいは段ボールベッド、そういうものも含めて備蓄を進めてまいります。
 避難所の方々、一番つらい立場におられる方々、そういう方々の環境を改善するということは当然のことでございます。今年度は、内閣府防災担当の予算・人員を倍増いたしました。来年度は、専任の大臣の下、十分なエキスパートと予算を有する防災庁を設立をいたします。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対応するため、防衛力の抜本的強化を着実に進めますとともに、サイバー攻撃を仕掛けてくるサーバーを無害化する制度を設けるなど、抑止力を強化をいたしました。
 自衛官の処遇改善は、防衛力強化のためにも喫緊の課題であります。どんなに立派な船や車両や航空機を持っても、自衛官の方々がいなければ、それは動きません。関係閣僚会議で取りまとめました「基本方針」(「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」)に基づく取組により、5割の自衛官の皆さんが「勤務意欲が向上した」とアンケートに回答していただいております。また、中途の退職者の数が減少するなど、効果は現れておると認識をいたしております。更に処遇改善に取り組んでまいりたいと思います。
 現下の中東情勢への対応を含め、海外の邦人の安全確保に向けた万全の措置を、引き続き講じます。

 年金制度につきましては、「106万円の壁」を撤廃しながら、より手厚い年金を受け取っていただける改革を実現をいたしました。立憲民主党と合意をし、今後、仮に経済が好調に推移しない場合には、基礎年金水準の目減りを防ぐ措置を講ずることといたしました。5年に一度の制度改革を果たし、現在、そして将来の受給者の給付を確保いたしたところでございます。
 高額療養費制度につきましては、今回の反省を踏まえて、幅広い御意見を伺いながら、丁寧に対応をいたしてまいります。
 公明党・日本維新の会との合意に基づき、病床の適正化など、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を図ります。
 無痛分娩の環境整備、女性の負担にも配慮した乳がん検診、女性用トイレの整備への対応など、それらを検討いたします。女性の方々が安心できる社会への見直し、これを着実に進めてまいります。

 大災害や有事に対応するためには、財政余力がどうしても必要であります。そのためにも、財政健全化に取り組み、2025年度から2026年度を通じて可能な限り早期にプライマリーバランスを黒字化させるとともに、コロナ禍前の水準に向けて債務残高対GDP比を安定的に引き下げることを目指します。

 最後に、「希望ある『未来』を創る」についてであります。

 コストカット型の経済から高付加価値創出型経済への移行に向けて、各種施策を講じてまいりました結果として、賃金と国内投資には「潮目の変化」が起きています。これを維持・加速させる鍵は、賃上げに加えて、「地方創生2.0」と投資の促進です。

 「地方創生2.0」では、AI(人工知能)、ロボット、ドローンなど新たなテクノロジーを最大限活用しつつ、「ふるさと住民登録制度」を創設し、関係人口1,000万人を創出することを通じて、人口減少下でも経済成長を図り、地域社会の活力を維持・向上させてまいります。
 「基本構想」(「地方創生2.0基本構想」)に沿って、民の力を最大限にいかす新たな官民連携により、「令和の日本列島改造」を強力に進めてまいります。

 GX(グリーン・トランスフォーメーション)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)、経済安全保障、コンテンツに加え、ヘルスケア、防災等の有望な分野への官民の投資を加速をし、雇用・輸出を拡大をいたします。対日投資を促進し、産業立国を目指します。戦略的研究開発、優秀な研修者の招へい、スタートアップ支援など、未来に向けたイノベーション創出の取組を強化します。

 これら3つのアプローチに沿って、まずは既存の予算、施策、それを総動員して的確な経済財政運営を行ってまいります。
 「骨太の方針2025」や新しい資本主義の「実行計画」、「地方創生2.0基本構想」、参議院選挙の公約等について、参議院選後に具体化し、着実に実施に移していきたいと、このように考えておる次第でございます。
 私からは冒頭、以上です。ありがとうございました。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、これから皆様より御質問いただきます。
 まず、幹事社から御質問いただきます。
 NHK、太田さん。

(記者)
 NHKの太田です。よろしくお願いします。
 今後の政治日程の中で、与野党各党にとって重要な意味を持ちます参議院選挙についてお尋ねします。冒頭でも一部言及がありましたけれども、長期化する物価高への対応ですとか、アメリカの関税措置を受けた日米交渉、それに政治の信頼回復など、課題は山積しています。参議院選挙では何を争点として位置づけ、どのような政策を訴えていくお考えでしょうか。また、獲得議席の目標と勝敗ラインについてもお尋ねします。

(石破総理)
 ありがとうございました。
 御指摘のとおり、論点は多々ございます。争点というよりも論点と言ったほうが私は適当だと思っています。いかにして強い経済をつくっていくか、強い経済、豊かな暮らし、揺るぎない日本、この3つの柱を私どもとしては実現すべく訴えてまいりたいと思っております。GDP1,000兆円の経済、国民の所得を5割以上増加させる強い経済、そして安定的な、持続的な賃上げを実現する、豊かな暮らし、そして安全保障、防災、治安対策、憲法改正等々を通じました揺るぎない日本と、そういうことを訴えてまいりたいと思っております。
 一番の関心が物価高ということにございまして、米の価格は先ほど申し上げたとおりであります。エネルギーの価格についても的確に対応いたしてまいります。物価高というものにきちんと対応するということ、そしてまた、安心して暮らせる日本というものを実現をしていかねばなりません。今の不安、明日の不安、そして将来の不安、そういうものを払拭して、今日より明日、今年より来年は良くなるということを国民の皆様方に実感していただけるよう、私どもとして、誠心誠意訴えてまいりたいと考えておるところでございます。
 議席につきましては、これは何議席を目指すということを軽々に申し上げることではございませんが、非改選と合わせまして過半数というものを頂戴できますよう全力を尽くしてまいりたいと考えておるところでございます。

(内閣広報官)
 続きまして、幹事社の西日本新聞、大坪さん。

(記者)
 西日本新聞、大坪です。よろしくお願いします。
 今、少し触れられたアメリカとの関税交渉についてお聞きします。日本政府は様々な分野の交渉材料をパッケージで示してきましたが、さきの日米首脳会談では合意できませんでした。従来の交渉戦略を見直す必要はないのでしょうか。また、損失見込みが膨らむ自動車産業を中心に先行き不安が強まる中、政府は合意時期の目標を示すべきではないでしょうか。教えてください。
 最後に、7月9日には、相互関税の上乗せ分の発動猶予期限が迫っています。中東情勢悪化による交渉への影響も指摘される中、総理はトランプ大統領にどのように働きかけるかもお聞きします。よろしくお願いします。

(石破総理)
 合意を早期に実現するということにこだわるあまり、国益を損ずるということがあっては決してならないということはかねてより申し上げているとおりでございます。一つ一つの論点について、事務方、あるいは閣僚同士で、非常に綿密、緻密な詰めを行っておるところでございます。
 既に、鉄鋼、アルミ、自動車、自動車部品、相互関税については追加関税が発動されておるものでございまして、これらは日本の産業に影響を及ぼすものでございます。協議を引き延ばすために引き延ばすということをするつもりはございませんが、いかにして双方の利益を実現するか、先般のカナナスキス・サミットでも、30分にわたりまして膝詰めで話を行いました。これは最終的には、大統領が判断するということになると思っておりますが、私自身、国益を背負って全身全霊でこの交渉に臨んでまいりたいと考えておるところでございます。それは事務方、閣僚同士、そして首脳同士、そこにおいて、向こうもそうですが、私どもは決して日本の国益を損ずることがないよう、しかしながら、お互いが利益になる、いわゆる「ウィン・ウィン」というものを実現するために今後とも努力をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
 発動猶予期限の延長等々、上乗せ分のですね、このことについてもいろいろなお考えがあろうかと思いますが、そのことにつきましても、何が効果的か、何が最も国益に資するかということを考えながら、全力で取り組んでまいりたいと思っております。
 トランプ大統領に働きかけるということは、それは当然のことでございます。もちろん関税の問題もございますが、この中東情勢、安全保障の情勢もございます。冒頭の会見で申し上げましたように、ウクライナ、中東、アジア、これはつながっているものでございますので、その点はトランプ大統領も非常に強い思いを持っておるところでございます。関税につきましても、安全保障につきましても、誠心誠意、全力でトランプ大統領と交渉してまいりたい、議論をしてまいりたい、結論を得たいと考えておる次第でございます。

(内閣広報官)
 それでは、ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。
 フジテレビ、瀬島さん。

(記者)
 フジテレビ、瀬島です。よろしくお願いします。
 中東情勢について伺います。イランによるホルムズ海峡封鎖に対する懸念が高まっています。これまで、完全に海峡が封鎖されたケースというのはありませんが、今回、航行の遮断や封鎖に踏み切る可能性をどのように分析していらっしゃいますでしょうか。封鎖されれば、日本や世界経済への深刻な影響があるおそれがありますが、どのように対応していく方針でしょうか。また、外交上、日本として、独自に関係国に働きかけなどを行うお考えというのはありますでしょうか。よろしくお願いします。

(石破総理)
 ホルムズ海峡の封鎖される可能性について、今、予断を持ってお答えはできません。ただ、これは中東に石油の9割超(注)を依存しておる我が国として、我が国のエネルギー安定供給にとって重大な影響を及ぼすものでございますので、引き続き最大の緊張感を持って注視をしてまいりたいと思っております。事態が早期に鎮静化されるということが一番重要でございますが、対話の道が再開されるということを我が国として強く要請をするということでございます。
 あわせまして、当然のことでございますが、海外の邦人、この方々の安全確保にも全力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
 これはエネルギー価格、またガソリン価格が典型でございますが、それに強い影響を及ぼし得るものでございますので、ウクライナ戦争前の175円という水準を維持するために、そのための対応策を講ずるというのは、冒頭会見で申し上げたとおりでございます。私どもとして、あらゆる事態を想定しながら、適切に対応すべく準備をしてまいりたいと考えておるところでございます。

(内閣広報官)
 それでは、続きまして、読売新聞、田島さん。

(記者)
 読売新聞の田島です。よろしくお願いします。
 今国会は少数与党での国会運営となって、野党の協力が欠かせず、総理の推し進めたい政策を実現する上で限界を感じる場面も多かったかと思います。そうした中、今後、政権に協力する野党が出てきた場合に、政権の安定のために連立の枠組みの拡大を検討するお考えはありますでしょうか。それとも、いずれかのタイミングで衆議院を解散して、あくまで自公での多数確保を目指すお考えでしょうか。お願いします。

(石破総理)
 衆議院解散、あるいは連立の拡大について、予断を持ってお話をすることは差し控えたいと思っております。ただ、あくまで一般論になって恐縮でございますが、連立政権というのは、一つ一つのテーマだけの連立というのはあり得ないことでございます。私が野党・自民党の政調会長をいたしておりましたときに、当時、菅直人総理大臣でありましたが、谷垣総裁に対しまして連立の働きかけがございました。私、その場面におりましたけれども、それは一つだけのテーマ、例えば、東日本大震災だけに限った連立というのはあり得ないので、それはあらゆる政策について合意できるということが必要であるというのは、それはどの時点でも、どの時代でも同じことだと考えておるところでございます。

(内閣広報官)
 続きまして、AP通信の山口さん。

(記者)
 AP通信の山口と申します。よろしくお願いいたします。
 防衛費についてお尋ねいたします。アメリカ国防総省は、日本などアジアの同盟国に対しても、NATO(北大西洋条約機構)で今、議論されているようなGDP比5パーセント水準に引き上げる必要があるというような認識を示しております。日本は現在、27年度中の2パーセント達成を目指していますが、混迷を深める安全保障環境の中、防衛費増額を含め防衛力の強化について、総理はどのようにお考えでしょうか。
 また、トランプ大統領から次々といろいろな要求が出てくる中、これについてどのように対処していかれるかも教えてください。よろしくお願いします。

(石破総理)
 これは今国会で何度も申し上げたことでございますが、私は戦後を全部知っているわけではございませんけれども、私が知る限り最も厳しい安全保障環境にあるということ、そして、ヨーロッパ、中東、アジア、これはみんな密接につながっているということでございます。その中において防衛力を強化するということは、それは独立国家として果たしていかねばならないことだと考えております。これは一つ一つ、陸であり、海であり、空であり、あるいはサイバーであり、宇宙であり、人員であり、必要なものをきちんと積み上げていくということが重要でありまして、最初からGDP比幾らありきということではございませんが、必要なものを我が国の判断として積み上げていくということが重要だと思っております。
 その際、同盟国でありますアメリカとの調整を行うということは、それは同盟国であります以上、当然のことであり、意思疎通というものは綿密に図っていかねばならないということだと考えておるところでございます。金額ありきでは決してございませんが、必要なものをきちんと積み上げていくということが重要であり、そのためには、納税者の方々、国民の皆様方に、今の安全保障環境がどうなっているかということをきちんと御説明をして、納税者の方々の御理解、国民の皆様方の御理解を得るために努力をしていくことが必要だと考えておる次第でございます。

(内閣広報官)
 続きまして、TBSの中島さん。

(記者)
 TBS、中島です。よろしくお願いいたします。
 先ほどの中東情勢の質問に関連しまして、ホルムズ海峡が封鎖された場合、これは集団的自衛権の行使の対象になるのか、政府の見解をお伺いさせていただきたいと思います。

(石破総理)
 政府の考えにつきましては、平和安全法制のときに議論があったとおりでございます。その考えを変更するということはございません。集団的自衛権というものは、我が国にとってそれが本当に我が国に対する攻撃であるというふうにみなされる、そういうふうにみなされるような事態ということになるということ、そのことが重要でありまして、そのような考え方の下、集団的自衛権についての整理というものについては、従来の姿勢を踏襲するということでございます。

(内閣広報官)
 新潟日報社、貝瀬さん。

(記者)
 新潟日報の貝瀬と申します。
 米政策についてお伺いいたします。政府は備蓄米の放出を始めとしまして、米価の高騰対策に力を注いでいらっしゃいます。ただ、産地では、こうした政策がやがては米価の行き過ぎた急落につながらないかと心配する声もございまして、これもまた、今日の悩み、明日への不安となっているところです。総理は今国会で何度か農家への所得補償に言及されましたが、これは水田政策を見直す令和9年度以降のお話かと思います。今後、米価が下落局面に入った場合に、生産者の所得をいかに確保していくのか、直近の令和7年、8年産を含めたお考えをお伺いいたします。

(石破総理)
 これは先ほど申し述べましたが、消費者の方々に、安心して安定した価格で米を購入していただけるということが重要であります。1年間で100パーセント上がったということは、どう見ても普通のことではございません。備蓄米を放出し、随意契約を行うということで、大勢の方の御努力を頂いて、直近で4,000円を切る、3,000円台になるということになったということでございますが、では、生産者の方々はどうなるのか。令和7年産米、8年産米、政策が大幅に転換するためにはそれなりの時間を要しますので、令和7年、8年に向けても、消費者の方々が安心して安定して買っていただけるということと、生産者の方々の努力が報われ、再生産が確保される、この両方の実現を目指して努力をしてまいりたいと思っております。
 所得補償についてお触れになりましたが、それは国民の皆様方の税金というものを財源とするものでございますので、それにふさわしいやり方でなければなりません。それはコストを低減する、付加価値を増やす、輸出への努力を行っていただくということに対して、国民の皆様方の御負担による補償というものは可能になるというふうに考えておるところでございます。
 生産者の方々の不安というものがございます。もし下がったらどうするんだということ。それは所得補償というものを考えてまいりますが、それが納税者の御負担に値するようなものであるように、生産者の方々の御意見も十分に承っていきながら、努力した方々、一生懸命農地を守っていただいている方々、そういう方々の再生産が可能になるように、本当に米生産者の方々のお気持ちに沿った、そしてまた消費者の方々の安定的な消費に資するような、そういうものの両立を目指してまいりたいと考えております。

(内閣広報官)
 続きまして、河北新報の吉田さん。

(記者)
 河北新報の吉田と申します。
 防災庁について伺います。仙台市や福島県いわき市を始め、今、全国各地で防災庁の地方拠点の設置の要望が相次いでおります。早期に地方拠点の設置場所選定に向けた基準を示すべきというふうに考えますが、いつ頃基準を示される予定でしょうか。また、どのような基準を設けるべきとお考えでしょうか。さらに、大規模災害を経験した地域に分局を置くことについてどのように考えるかも併せてお聞かせください。

(石破総理)
 これが基準であるということについて、明確なものが今あるわけではございません。しかし、そこにおいて災害が起こったときに防災庁が機能不全になるということがあっては決してならないことでございますので、災害があったときでも機能し得る、そういう場所はどこなんだろうということ。そしてまた、いろいろな知見が蓄積をされておるということ。そして、東北地方、東日本大震災、これの復興は今なお道半ばでございますので、その機能の継続ということも併せて考えていかなければなりません。
 今後の5年間は、今までの5年間を更に上回る規模でやっていきたいということは先般申し上げたとおりでございますので、そのことも念頭に置きながら、東日本大震災の復旧・復興というものの更なる加速を図るということも念頭に置いて、その場所、あるいはその在り方というものについて検討してまいりたいと思っております。
 今このような基準があるということではございませんが、それは本当に機能というものが国家全体のために果たせるということ、そして、今なお道半ばである、そのようないろんな事業に適切に対応できるということは必須だと考えておるところでございます。

(内閣広報官)
 次、いかがでしょうか。
 日経新聞、三木さん。

(記者)
 日本経済新聞の三木と申します。
 中東情勢について追加でお伺いさせてください。総理は昨日、アメリカによるイラン攻撃を日本政府が支持するかについて、「政府内で議論する」とおっしゃいました。今回のアメリカの攻撃は、国際法上の根拠の乏しさから、「法の支配」の理念に反しているとの専門家の指摘も相次いでいます。国際法の観点から、この攻撃が妥当だったとお考えでしょうか。評価を伺います。また、中東情勢を始めとする安全保障に関わる議論を参院選の論戦の中でどのように展開をして、何を訴えていくお考えでしょうか。

(石破総理)
 国際法の観点からいろいろな議論があるということはよく承知をいたしております。私自身、いろいろな観点から考えておるところでございますが、我が国は直接の当事者ではございません。また、詳細な事実関係というものを正確に把握できるという立場に今おりません。したがいまして、確定的な法的評価というものを、現時点において、我が国としてすることは困難だと思っておりますが、国際法的にどういうような評価があり得るのかということについては、常に常に検討していかねばならないと考えておるところでございます。
 今回のアメリカの対応は、事態の早期鎮静化を求めつつ、イランの核兵器保有を阻止するという決意を示したものだというふうに考えております。それは我が国の周辺においても、そのような核開発というものを着実に進めておる、あるいは運搬能力を確実に向上させているというような状態があることも、それは国民皆様方が御存じのところであります。ですから、ヨーロッパ、中東、アジア、これがつながっているということを申し上げたのは、そういう趣旨も含んでおるところでございます。
 国民の皆様方にこの安全保障というものを訴える、そして中東の問題を訴えるという場合に、やはり石油の9割超(注)を依存しておるということを、やはりきちんと認識をしなければいけない。その地域の平和と安定があって、我々は今の暮らしを享受することができる。そこの平和と安定について、私どもはいかなる役割を果たしているか。利益を享受するというだけであってはならないのであって、そこにおいて軍事的な負担ということについて言及するつもりはございませんが、そこの平和と安定で我々は今の暮らしを享受しておるということ、そして石油の9割超(注)を頼っておるということ。そこにおいていかなる努力があって、そこの平和と安定が実現されているか。そして、核保有の能力を持つという国が増えるということ、そのことに対してどれだけ強い危機感を持つかということを国民の皆様方に共有いただくべく、誠心誠意、努力をしてまいりたいと考えております。

(内閣広報官)
 それでは、時間の都合もございますので、残りあと2問とさせていただきます。
 中国新聞の中川さん。

(記者)
 中国新聞の中川です。
 政治改革についてお伺いします。企業・団体献金の在り方について、与野党で3月末に結論を得るとしていましたが、今国会では方向性がまとまりませんでした。総理はいつまでに、どのような内容で結論を得るべきとお考えでしょうか。
 また、当選無効の議員の歳費返納も実現できていません。政治資金監視委員会の詳細設計もこれからです。残された政治改革の課題は多いですが、総理は今後どう議論をリードしていくお考えでしょうか。例えば、議論そのものをかつての選挙制度審議会のように外部有識者に委ねるお考えはないでしょうか。現状の認識と併せて伺います。

(石破総理)
 国会において、今国会も本当に真摯な議論をいただいたというふうに考えております。企業・団体献金につきましては、私どもは禁止よりも公開だと。公開をして、有権者の皆様方に御判断いただくというような、そういうような状況をつくり出していくために努力をしてきたものでございます。更に御理解いただけるように引き続き尽力をいたしたいと考えております。やはり政治改革は置き去りになったのではないかというような思いを国民の方が持たれることがないように、我が党として、引き続き、努力をしてまいりたいと考えております。
 当選無効となった国会議員の歳費返納の義務づけでありますが、これは自公連立政権合意でも確認済みでございます。あるいは政治資金監視委員会の設置のための立法措置、引き続き結論を得るべく、建設的で真摯な議論を続けてまいりたいと思っております。
 これは古くて新しい議論なのですが、国会の在り方というもの、政治の在り方というものを政治が判断していいのかという御議論は常にございます。どうしても自分たちが有利なように考えてしまうのではないかというような、そういうような思いが国民の方々にあることは、私、40年前からよく承知をいたしておるところでございます。
 ですから、国会議員が自分たちに、政治家は自分たちに都合がいいようにというような、そういうことがないように、今、御指摘の点も含めまして、もちろん立法府としての責任というものはきちんと認識をしながら、幅広く国民の皆様方に御理解いただけるように更なる努力が必要だということはよく承知をいたしておるところでございます。

(内閣広報官)
 それでは、最後の質問とさせていただきます。
 新日本海新聞、西山さん。

(記者)
 日本海新聞の西山です。よろしくお願いします。
 今夏の参院選の合区についてお伺いいたします。今夏の参院選で、鳥取・島根、徳島・高知の4県は、4度目となる合区での通常選挙を迎えることになります。投票率の著しい低下や無効投票率の上昇など、合区の弊害はかねて指摘されているところですけれども、鳥取という合区対象県が地元の石破総理として、4度目の合区選挙を迎えることになったことへの受け止め、そして、合区解消に向けた道筋を石破総理自身どう描いていらっしゃるのか考えをお聞かせください。

(石破総理)
 私どもとして、鳥取・島根がそうです、高知・徳島もそうです。合区の解消をしますということを選挙のときにお約束をしながら、今回もいまだに実現できていないということは、一(いつ)にかかって私どもの責任でございます。このことは深くおわびをしなければならないと思っておりますが、今度の参議院選挙におきましても合区ということになります。私自身、どれだけ多くの有権者の方々に候補者の訴えというものが届くかということについて、本当に努力をしてまいりましたが、今度の選挙もそうしなければいけないと思っております。
 今月、各党・各会派で構成されております参議院改革協議会、これが報告書をまとめられましたが、その中に、現行の合区の弊害について、多くの会派において共通認識としてあると、合区の不合理を解消すべき意見が大勢であったというふうに書かれておるところでございます。各会派が本当にこれは不合理だよねということを認識しておるわけでございますから、それは立法措置によって合区の解消というものができるか、国民の皆様方の御負担というものを増やすことなく、いかにして一票の価値の平等というものを実現をしていくか、これは国民の権利に関わることだという認識の下に、これから先も努力をしていかなければなりません。
 同時に、鳥取・島根にしても、高知・徳島にしてもそうですが、人口減少県でございます。過疎地でございます。それは鳥取・島根、高知・徳島に限ったことではございません。そういうところの声が届かないということは、国全体にとってどうなのでしょうかと。地域の利益とかそういう話ではなくて、国全体にとってこの合区というのはどういうことなのだと。そういうような過疎地、そういうところの声が反映されなくなる日本というのはどういうことなのですかということもきちんとお訴えしていかねばならないと思っております。この早期解消に向けて、更に努力をいたしてまいります。

(内閣広報官)
 以上をもちまして会見を終了いたします。
 現在、挙手をいただいている者は、追って書面で御質問を提出いただければと思います。本日中に1問、担当宛てにメールでお送りいただければ、後日、書面で回答させていただきます。
 御協力ありがとうございました。

(石破総理)
 ありがとうございました。

 (注)「8割」と発言しましたが、正しくは「9割超」です。

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